えのきの旬を知っていますか。スーパー等で流通している栽培のえのきは夏が最も美味しくなる旬です。夏に美味しいきのこというのは、普通に食べられるものではえのきくらいではないでしょうか。暑いときこそ美味しく頂きたいものですね。ですが、天然のえのきの旬はいつだか分かりますか。山に生えるきのこなのですから、当然秋と答える人が多いでしょうが、不正解ではありませんが、もう少し厳密にいうと、晩秋からえのきの旬ははじまります。
山のほかのキノコたちが姿を消す11月頃が、天然のえのきの季節です。平地よりも気温の低い山々では、11月にもなると木々は枯れた姿を見せます。若々しい緑の夏を過ぎ、色とりどりの秋の饗宴も終わると、全く違った静かな表情を見せます。そして、葉を落とした裸の木々たちのなかで、山の林はそれまで隠していたさまざまな景色を人の目にも見せてくれるのです。そうした景色のなかで、えのきだけは最初、少し褐色のかかった人見知りな姿を現します。葉の日傘がなくなった林で、陽の光を生まれたばかりの小さな傘いっぱいに受けて、ちょっぴり日焼けしカサカサしてしまうのです。
ひとりの力で頑張っている秋の終わりの無防備な姿のえのきも、冬になると雪が優しく覆いをかけて守ってくれます。冷たく温かい雪の下で、えのきは安心して育っていきます。山の長い冬が終わり、春の日差しがようやく雪を溶かし始めるころ、雪に守られてきたえのきは、その生まれたての茶色がかったお顔とは違う、優しい黄色い姿を現します。秋の終わりから春のはじまりまで、冬からほんの少し隣の季節に触れるこの期間が、天然のえのきの旬なのです。